西荻塾中学部ブログ

【よくある質問・大学受験部寄稿編】計算ミスがひどいのですが・・・どうやったら治りますか?

計算ミスはなくせますか?

中学・高校を問わず、よくある3大質問のひとつ、人類の永遠の課題とも言うべき、「計算ミスはどうやったらなくなりますか?」今回は、大学受験部で主に教鞭を執る、西荻塾数学科の赤星(代表)と村田(理数科主席講師)より、中学生のみなさんに、特別寄稿です。

手軽に、すぐ効く薬は存在しない

いきなりこう断言してしまいます。ごめんなさい(というか、仮にすぐ効く特効薬を作れたら世界を救ったも同然で、ノーベル賞どころの騒ぎではありません)。どちらかというと、計算ミスをした、そこの君、そう、君だよ君。その君が自己免疫をつけることです。

計算は言葉である。

まず、大学受験部の数学科の指導方針の記事をここに転載します。詳しくは、こちらをお読みいただくとして、本記事に必要な部分をそのまま引用します。

「計算は言葉である」。これは、誰の名言でもないようです(一応、Googleで検索してみたりもしましたが、似たようなものはあっても、「名言」ではなかったので、もしあったら教えてください)。ですが、大事なことなので、もう一度言います。

計算は言葉である。

これは、西荻塾の数学科のキーワードです。「計算が出来なければ数学は出来ない」わけですが、計算は言葉です。

A 献立は肉じゃがだから、肉とジャガイモとにんじんが必要である。
B 肉とジャガイモとにんじんで作れる献立は、肉じゃがだ。

A’ 2x+3=7を解くと、x=2である。
B’ a>2ならば、2a-3>1である。

Aは方程式を解くという作業であり、Bは代入するという作業である、数学の基本操作です。もし、「献立は肉じゃがだから、サバとサーモンが必要だ」とか「サバとサーモンで作れる献立は、肉じゃがだ」というのであれば耳を疑います。正確に運用しなければ、何も伝わらない。だからこそ、「ことば」を正確に運用するトレーニングを積む。数学において、もっとも一朝一夕ではどうにもならないのが計算力です。地道に誤魔化さず、丁寧に対話を繰り返すことです。

もちろん、ただ闇雲に馬鹿正直に計算すればいいというものではない。原理・原則に基づいたり、上手くやることで、素早く、正確に出来るようになる。「肉じゃがを作るのに、畑の土作り」をせよとは言っていない。まず、冷蔵庫を開けるか、スーパーに行くでしょう。実は、「めんどくさい」と思うその心に、計算の極意があると言っても過言ではありません。

(以上、引用終了)

計算の免疫をつけるには

そういうわけで、計算は数学が出来るようになるための必須の力だということですが、では、ミスで失点を重ねないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

ウイルスへの免疫は、ワクチンか罹患(簡単に言えば「かかってしまう」)すること

風邪の特効薬(抗ウイルス薬)は存在しないのはご存じですか。インフルエンザや新型コロナは重症化するおそれがあるので、そういう重症化して命に関わるようなものには、ワクチンや特効薬(抗ウイルス薬)が開発されていますが、一般的な「風邪」のワクチンや特効薬はありません。症状を抑える薬(対症療法)はあっても、結局は、寝て、栄養補給して、体力を温存しながら、自分の免疫でやっつけるしかないのです(いわゆる風邪薬は、症状を抑えて楽にすることで、体力を温存させるためのもの)。

では、計算ミスについてはどうか。これについても、風邪と同じ。

ワクチンも特効薬も存在しない。

これが、この記事の冒頭で宣言した、すぐに効く薬はないということの趣旨です。やっかいなのは、計算ミスについては対症療法の薬もない、ということです。楽はできません。

計算ミスをもみ消す人たち

計算ミスをして点数を落としたそこの君、次の状況を想定してみてください。

計算ミスで10点以上落として、平均点を切った。考え方は分かっているのだが・・・。

こうした事実に直面したとき、君はどうしてますか?

  • 分かってはいるわけだから点数ほど悪くない結果である、と考えて「もみ消す」
  • ミスは仕方ない、として「もみ消す」
  • 計算ミスした部分は復習の必要はない、として「もみ消す」

おおむね、このどれかに当てはまっているのではないでしょうか。

「いやいや、もみ消してなんてないよ」という君、「黙れ」です。
※なお、高校生には一貫してそう返すことにしています。

計算ミスには原因がある。上記のような態度では、そこを探ることもなく、そのまま放置することになりますので、それは「もみ消した」というほかないのです。

やや語気が強まってきました。

計算ミスをした事実と向き合え

かくいう私(赤星)の中学生時代がそんな感じでした。だから数学の成績はハッキリ言って良くない。高校に入ってから、ある数学の教師と出会って、数学の面白さに気づいて真剣に向き合うようになったある日、

2x-1=0という方程式を、x=2とした。

いまでもよく覚えています。そう、結構難しい設問(配点10点)でしたからね。途中、四苦八苦して、ようやくたどり着いて、最後の1行の計算です。「その失点で、5点引かれた」んです。「いやいやこんなミスで5点(半分)も引くなんて(笑)」と笑顔で教卓の教師に抗議に行きました。

「黙れ」(却下)

納得できない私は、食い下がりましたとも。そしたら、後ほど職員室に来るように、と言われました。

数学の教師「このミスは断じて許さないので、点は与えない」
私「考え方もあってるし、ミス以外は完璧じゃないですか。」
数学の教師「ミスがあるのに完璧などおこがましい」
私「でも5点は引きすぎ」
数学の教師「大学入試でこんなことをして、大学に抗議でもするつもりか」
私「それとこれとは違う・・・」
数学の教師「違わない。何が違うのか?」
私「・・・」
数学の教師「恥を知れ」

人に言われると、とても悔しいですね。でも、それ以上に、今まで計算ミスについて、重くどころかまったくスルーしていて、どや顔で抗議してた自分がもう恥ずかしくて仕方なく、穴があったら入りたい。

こんな思いは二度としたくない。計算ミスに寛容じゃない自分のスタートラインはここから始まりました。数学の教師は、ここで恩師に昇格です。

計算の一行一行に責任を持つ。ミスが起きたら絶対に言い訳をしないで、取れたはずの1点を落としたことを激しく後悔する。

それを繰り返していたら、途中でミスに気づくことも増えました。自分で軌道修正して、ミスを防ぐことが出来るようになったのです。そして、それをさらに繰り返していたら、正確性もスピードもあがった。「こういう計算結果はあり得ない」という感覚、「こんなに計算だらけにはなるはずがない」というさらに磨かれた感覚。授業では恩師がよく言ってたことですが、それが肌感覚で分かるようになりました。ちなみに、それまで2年かかってます。

悔いて恥じて、対処しようとするところから免疫がつく

免疫力の話に戻りましょう。

風邪を引いたら、腹をくくって、しっかりと寝る、できる限り身体を冷やさないように、消化にいい物を食べてまた寝る。そうやって、打ち勝って、免疫を獲得するのです。いろんなウイルスにさらされながら、風邪引いてつらい思いをして、免疫を勝ち取っていくのです。まずは、自分の計算ミスへの向き合いかたを大いに疑問視してみてください。悔いて恥じて、初めて免疫を付けるきっかけが得られる。それ抜きでは自己免疫は付かない。ミスして、もみ消すスタンスは、風邪引いたのに、裸で水浴びをして、外で笑っているようなものです。

「こんなミスで失点なんかしたくない」、そういう強い気持ちがあなたの中に芽生えているかが一番のポイントです。ほかの第三者はまず関係ないと思います。だれかのせいにしないでくださいね。あと、人に言われるのは悔しいです。

処方箋

とはいえ、それで突き放すばかりではヤブ医者(ヤブ塾)ですから、私たちも20年以上数学を教える身として、いくつか処方箋をお出しします。特効薬とは言えませんし、実はありふれたことかもしれないけれど、ミスを治そう、と真摯に悔いて恥じて、向上心を持つ君には、免疫を付ける1つの助けにはなると思います。

  • 時間が足りなくて、ミスが増える
    →演習不足。日常で数学に触れる量が少なすぎる。学校の問題集などを日常的に触れているか?まとめてやるより、短い時間で毎日やる方がはるかに効果的(かけ算の九九を覚えたときを思い出せ)
  • プラスやマイナスが逆になったり、書き間違いが多い
    →(おそらく)ミスしても全く反省していないことが原因。まず、「恥を知れ」。そんなことで点数を落とすのは恥ずかしい。という心持ちが大事。その上で、「日常学習」の場面で、一行書いたら、手元で再度ミスないか見直す癖をつけるとよい。テストではその時間は無いが、日常では時間があるはずなので、その作業を実践すること。実践を重ねていけば、スピードもあがっていく。こればかりは一朝一夕ではなんともならないので、注意すること。日常で、答え合わせの際は、ミスの部分も含めて真剣に向き合うこと。計算を省略するなどもってのほかです。
  • 四則演算(数学というより算数)にミスが多い
    →こればかりは、過去(小1~小3)に戻ることができないので、今からでも意識的に計算するしかありません。この手のケースでは、「あとは計算だから省略」とか「電卓を使う」とかいう姿勢に問題があることが多いですが、改めましょう。
  • 文字式の計算でミスが多い
    →文字を少し丁寧に書いてみること。文字式の「文字」がやたら汚い人が多いのですが、文字は丁寧に。少なくとも、人が読んで簡単に判別がきくように書いてほしいです。丁寧に書けば、少し丁寧に計算する癖が付きます。雑に適当に書くから、計算もおざなりになる。丁寧に書くことで、複数の文字が登場しても、見通しが良くなります。散らかった部屋よりも、片付いた部屋の方が次に何をすべきか計画を立てやすいのと同様です。おすすめですが、字や図は大きく書く。ノートの罫線に合わせて細々と書くのはあまり得策ではない(実際罫線のある答案用紙は皆無です)。
  • 講師に答案を見てもらえ
    →ミスで失点をした君、是非講師に答案を見せてください。もしくは、計算ミスについて、相談してください(駅前校で私や村田に相談してもらってももちろんOK)。我々講師陣は、皆、大学受験において数学でしっかり得点し、合格してきた者ばかりです。誰しもがミスと戦ってきた。先人の知恵を借りることも有益です。楽に計算するコツなんかもたくさんあります。是非聞いてみて下さい。

中学部ブログ一覧

-西荻塾中学部ブログ